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 こんにちは。初めまして。私は真城華代と申します。
 最近は本当に心の寂しい人ばかり。そんな皆さんの為に私は活動しています。
まだまだ未熟ですけれども、たまたま私が通りかかりましたとき、お悩みなどございましたら是非ともお申し付け下さい。
私に出来る範囲で依頼人の方のお悩みを露散させてご覧に入れましょう。どうぞお気軽にお申し付け下さいませ。
 報酬ですか?いえ、お金は頂いておりません。お客様が満足頂ければ、それが何よりの報酬でございます。

 さて、今回のお客様は……。


華代ちゃんシリーズ
「九死に一生」
作:高樹ひろむ


※「華代ちゃん」シリーズの詳細については、以下の公式ページを参照して下さい。
http://www7.plala.or.jp/mashiroyou/kayo_chan00.html


 某月某日、その日は雲ひとつ無い日本晴れの空が広がっていた。
しかしそれとは裏腹に、加藤信夫(かとう しのぶ)の心はものすごい土砂降りだった。
前に勤めていた会社が倒産し、失業者になってからはや3ヶ月経つ。失業保険も切れる寸前だ。
そろそろ仕事を見つけないと暮らしていけなくなるのは時間の問題である。

 信夫はいつものようにハローワークへと行く。あと何回行けばいいんだろ……
景気が良くなってきたといってもまだまだ失業者は多い。ハローワークも仕事を探す人であふれていた。

 仕事探しの端末機がずらりと並んでいる。これで仕事を探せばいいのだが、全て使われてて空きが無い。
後ろに立って空くのをしばらく待つが、なかなか順番が回ってこない。信夫はイライラしていた。
と、ようやく空きができたので端末機の前に立つ。

 そして、いつものように仕事の検索をする。しかしこれといった仕事は見つからなかった。
(また今日も仕事が見つからなかったか……いったいいつになったら就職できるんだろ?)
そう思ってハローワークを出たその直後のことである。

 道の向こうを歩いていた女の子が信夫を見ると、さも用があるようにこちらに向かってきた。
そしてそこへトラックがものすごいスピードで……

「あぶないっ!」と言う間もなく信夫は駆け出していた。
そして女の子を抱きかかえると歩道に倒れこんだ。その直後トラックが後ろを通り過ぎた。
まさに間一髪のことだった。

「おい、何やってんだ、危ないじゃないか!」信夫は女の子を叱りつけた。

「ごめんなさい。お兄さんがあまりにも悩んでそうだったから」女の子は言う。

「えっ? どういうこと? きみは?」信夫は訊いた。

「あたし、セールスレディです! 悩み事がありましたらご遠慮なくお申し付けください」
と言って女の子は名刺を差し出した。


「ココロとカラダの悩み、お受けいたします 真城 華代」


「しんしろ はなよちゃん? セールスマンなの?」信夫は訊く。

「ましろ かよです。セールスレディやってます」女の子は答える。

「ごめんごめん、かよちゃんね。セールスレディかぁ、いったい何を売ってるのかな?」

「いえ、物を売ってるわけではなくて、お客様のお悩みを解決するサービスです」

「そうなの、でも僕はお金なんか持ってないんだけど。失業中なんだ」信夫は答える。

「いえ、お金なんかいただきません。お客様の満足感が私への報酬です」華代ちゃんは言う。

 なんのこっちゃ? と信夫は思ったが、ふとある考えが頭に浮かぶ。
(この際だからダメ元で頼んでみよう、どうせこのままでも仕事は見つかりそうにないし)

「そうだなあ、それじゃ僕にいい仕事を見つけてくれるかな」信夫は言う。

「うーん、そうねえ。仕事と言ってもいろいろあるけど、どんなのがいいの?
 ホステスさんとか、コンパニオンさんとか、メイドさんとか、ウェイトレスさんとか」

どれもこれも女性の職業である。この娘はおふざけで言ってるのか?
それとも女装して働けとでも言うのか? と信夫はいぶかった。
こちらは真面目なのにと思いどなりつけようと思ったが、ここはやさしくたしなめることにした。

「いや、そういうんじゃなくてね、もっと普通の、そうだな……」

信夫は考え込んでしまった。普通の職業と言ってもいろいろある。
いざ言おうとするとなかなか明確に言えないものである。

その代わりというわけではないが、信夫の頭には先ほどのことが浮かんでいた。

「しかしさっきは危なかったなあ、まさに九死に一生を得るというやつだよ」
と話したとたん、華代ちゃんは目を輝かせた。

「そういうことだったんですか、わかりました。それじゃあいきますよ、そおれっ!」
と言いながら手を振る華代ちゃん。と同時に信夫の体を風が吹き抜けていく。

 信夫の胸に違和感が走る。なんなんだこれは?
「ええっ、何これ。いったい何をしたの? 華代ちゃん」

違和感はだんだんと大きくなり、そして胸がムクムクとふくらんでゆく。
さらにはお尻が大きくなりズボンが張り裂けそうになる。

股間のモノがまるで吸い込まれるように消えていく。
肩が落ちてなで肩となり、腰は細くなり、背丈が少々縮んでゆく。

髪の毛も長くなって胸くらいまでの長さになる。少々天然パーマがかかっているかな。
細くて華奢な手、すらりと伸びた足。

そして顔はいかにもキャリアウーマンという感じに変わっていた。
「こ、これは……」と言った声も甲高い女性の声だった。

 今度は服装が変化を始めた。

上着の背広が女物のスーツに、ワイシャツがブラウスに。ネクタイは女物のボータイに。
それと同時に、押さえつけられ苦しかった胸も緩んで楽になる。

ズボンが短くなってゆき一つにまとまる、と思ったら上着とお揃いのタイトスカートに。
かかとがググっと持ち上げられたと思うと靴がハイヒールに変化。

先ほど楽になった胸が再び締め付けられる。ブラジャーが着けられているのか?
下着も股間にぴったりとフィットするように変わっていった。これはパンティだろうか。

そして靴下は肌色になり、長くなっていきパンストへと変化した。
最後に髪の毛が後ろでまとめられ、顔に化粧が乗っかる。

信夫は自分の体に起きたことが信じられずに呆然としていた。


 しばらく後ハッと気が付くしのぶ。そういえばこの娘、華代ちゃんって言ってたっけ。
たしか道の向こうから渡ってきて、そこへトラックが走ってきたので間一髪助けて、そして……

(その後何を話してたんだろう? よく覚えていないということは大したことじゃないわね)

でもしのぶの手の中には華代ちゃんの名刺があった。ということは……

「そういえばまだ名刺渡してなかったわね、はい、これ」
と華代ちゃんに名刺を差し出すしのぶ。そこにはこう書かれていた。


「福岡市博多区○○ 博多物産株式会社 加藤 しのぶ」


しのぶは時計を見る。そういえば福岡行きの最終便は何時だっけ?
「道路を渡る時は車に気をつけてね、じゃあね」としのぶは華代ちゃんに言い残して空港へ向かった。


 今回の依頼ですが、最初はどうしようかと迷いました。
いろいろ紹介しても乗ってこないと思ったら、自分でちゃんと決めてたんじゃないですか。
やっぱりこちらから押し付けるのでなくて、相手の希望をきちんと聞くべきですよね。

 でもって希望は九州で一生OLだそうで、働きたい場所まで決めてたというすばらしい人でした。
働く意欲もあるようだし、彼女なら一生勤め上げてくれそうです。よかったよかった。

 それじゃまたどこかでお会いしましょう。See You!


 「九死に一生を得る」と「九州で一生OL」は似ているというのを聞いたことがあり、それに
華代ちゃんを登場させたらどうなる?という発想から生まれたのがこれです。
その言葉を使うようにシチュエーションを当てはめていくとこうなるわけで……修行が足りんかな、まだ。

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